ファンタジーとハードな現実を内包した家族小説。
自分を裏切った妻。
心の壊れた息子。
・・・そして死期の迫った父。
自らもリストラの憂き目に合い、生きていく事に疲れた主人公。
そんな彼の前に一組の親子がワインカラーのワゴンと共に現れた。
訳も判らぬままにワゴンに拾われた彼が向かった先で父に逢う。
しかし何故かその容姿は、彼と同じ年齢のものであった・・・。
「
現実に、あまり期待しないで下さい」
「
ええ・・・・・・わかってます」
「
サイテーでサイアクの現実だからね」
号泣。
ただただ号泣。
確かに「泣ける小説」ではなく、「泣いてしまう小説」でした。
戻った過去は、結局やり直しの効かない現実。
全てを悟った後に再度体験するその”現実”は、残酷以外の何者でもない。
それでもカズは全て受け入れ、生きていく。
あの親子が送ってくれたプレゼントが、彼の背中を押してくれるのでしょう。
読了後にはワインカラーのオデッセイに乗りたいと、心から思った自分がいました。